1 『伊勢物語』筒井筒2の原文冒頭
もろともにいふかひなくてあらむやはとて、河内の国高安の郡に、行き通ふ所いできにけり。
さりけれど、このもとの女、悪しと思へる気色もなくて、いだしやりければ、
男、異心ありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、この女、いとよう化粧じて、うちながめて、・・・
2 『伊勢物語』筒井筒2の超現代語訳
幼馴染のふたりは無事にゴールインして、幸せな結婚生活を送っていました。
けれども、何年か過ぎると、女のお父さんが亡くなってしまいました。
これはふたりにとっては経済的な危機を意味します。
そして、経済的な面倒も女の親がみていたんです。
女の親が亡くなって、
経済的な援助ができなくなると、男が通ってこなくなる!
というのも珍しくはなかったのです。
ここは、まさにそういった場面。
男は、
一緒に貧しい生活をするなんて冗談じゃない!
と思って、別のところ、河内の国というところに別の女を作っちゃったんです。
河内の国というのは、今の大阪。
男は、大阪の女のところに通い始めました。
男は大阪の女から経済的に面倒みてもらえるようになったというわけです。
そうはいうものの、
このもとの女は、不快な様子も見せずに、
男を送り出してやります。
男が浮気相手のところに行くって、
わかってるはずなのに。
男の心に懐疑心が生まれました。
だから、自分が出かけるときにも、
嫌な顔ひとつせずに送り出してくれるんだな。
そこで、河内の国に行くふりをして、
植え込みの中に隠れて様子をうかがっていたってわけ。
すると、このもとの女は、きれいに化粧をして、
ぼんやり外を眺めています。
妻は、浮気相手を待ってるに違いない。
男は自分の行いを棚にあげて、
女が浮気してるに違いないと思って、
許せない気持ちになってしまったらしいですよ。
まぁ、この時代は一夫多妻だから、
男に奥さんが何人もいても不思議はなかったんだけど。
妻は、物思いにふけりながら歌を詠みます。
今夜は風が強くて、沖には白波がたつほど。
あなたのことが心配だわ。
これを見ていた男はびっくり。
きちんを身なりを整えて歌を詠むなんて・・・。
なんて風情のある女なんだろう。
女のことが愛しくてたまらなくなって、河内の国に行くのもやめてしまったんです。
というのは、
この上もなくかわいい、愛しい、 たまらなく大好き! と思ったんですね。
うらむどころか、 ただ心配するなんて、
なかなかできることではありません。
もとの女の格調高さが描かれています。
もとの鞘におさまって良かったですね。
でも、大阪の女はどうなっちゃうのかな?
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